カテゴリ:ときどき短歌( 5 )

歌集一冊

香りの記憶というのはたぶん誰にでもあって、そう簡単には風化しないパーソナルストーリーを孕んでいる。
遠い昔、雪の夕暮れに広がっていた石炭の煙の。
八月の夜の海で吹かれた潮風の。
大切だった人とすれ違う、その瞬間の。
いまも感じられるようでいて、もうどこにも残ってはいない。

杉崎恒夫歌集「パン屋のパンセ」には、そんな実体のない質感のようなものが漂っている。
一首読むごとに広がる、ふんわりしたここちよさ…。
濁音を持たないゆえに風の日のモンシロチョウは飛ばされやすい
どんな小糠雨よりうつくしい朝のセロリーに振りかける塩
透明な秋の空気はフラスコのなかでフラスコのかたちしている
人の名を呼んだりしない秋天の星は無限の吸音装置
今日の夢に明日の夢を掛け合わすわれは未熟な調香士です


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アントニア・ベランカの「フローレ」。フラワー系らしくない瑞々しさにきゅっと惹かれた。
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by skyblue_2 | 2011-09-07 05:30 | ときどき短歌

ご無沙汰しました

自宅介護というかたちで関わっているわけでもないのに、それでもこの気持ちの重さとなかなか折り合えないまま秋を迎えてしまいました。「風立ちぬ いざ 生きめやも」と何処からか聞こえてくる気がします。

図書館で借りて、久しぶりに拾い読みしている福島泰樹の歌集。
夕闇のなかに佇ちたり あわあわと水色の空ながめるばかり

くきやかな日常群れつ翳りつつ戦いにゆく本買いにゆく

あの学園紛争のさなかの歌ですが、爽快な切り口という印象で受け止めるのは邪道でしょうか。
ふと歩きたくなったグランプラス。やっぱり今の私は少し風に吹かれたいようです。

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by skyblue_2 | 2009-09-23 17:59 | ときどき短歌

往き過ぎる

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人との関わりで躓くことは、ほんとうは小さな事、それに左右されたくないと思ってきた。それなのにまた。相手のあんなことには気がつかないほうがよかったという思いに囚われて、そういう自分を惨めだと思いながらもその人物を見損なったと悪態をついている。結局、相手と自分とを貶めているだけなのに。こういうコトを往き過ぎていくための幾日かは、苦しいけれど仕方がない・・・
去りゆかんものは吹きゆけ渺茫と闇の裾野をめぐる風はも
「風に献ず」福島泰樹
そんな私にとどく、歌。
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by skyblue_2 | 2006-03-10 10:20 | ときどき短歌

空をみるとき

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雨がやんで、夕暮れが近い。

信ずるもの実在のみと言ひきれずわが奥底に獏は夢食ふ

乳房喪失―歌集より
中城 ふみ子 / 短歌新聞社




華やかで、エゴイスティックで、癌になって31で死んでいった中城ふみ子の歌が、私をひたしてゆく。
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by skyblue_2 | 2004-08-28 01:36 | ときどき短歌

Maryと三十一文字

返歌、って、何でしたっけ
トラバさせていただきました。

こうさぎMaryが短歌を詠んでいる佐々木あららさんのサイトを教えてくれたのがきっかけ。(そんな機能もあるんですね!)

そこでお見かけしたのがトラバさせていただいた麻生新奈さんでした。

麻生さんの返歌、どきりとしました。みなさんはどうでしょう・・・?
私も、「付け句」と称して(正確には用語上の「付け句」にはなっていません)佐々木さんのところで書いた句を再録してみます。

君からのわかれの言葉 「わかれ」って命令形で押し付けられて
佐々木あらら

わかれって 別れの時に言う卑怯 別れの時まで言わない卑怯
麻生新奈

「わかれ」って自分に言って泣いているそんなあたしがここに居るのに
skyblue_2

勝手に誌上短歌会にしてしまいましたが、お許しを!
私のは歌というより、ただのひとりごとみたいで情けない。。
どなたかさらにつなげて下さると、おもしろいかもしれませんね。

短歌に熱中していた頃がありました。同人誌までつくって。
時々ベルギーでの日々を詠んでみようかなと、今考えています。
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by skyblue_2 | 2004-07-03 03:01 | ときどき短歌