ポートレイトに惹かれて手にしたこのCD。向田邦子の愛聴盤で、「眠る盃」の中で<(水羊羹には)ミリー・ヴァーノンの「スプリング・イズ・ヒア」が一番合うように思います。>なんて書いていらっしゃるとは知らなかった。
こういう声にしばらくの間包まれていたい、という気持ちに駆られる時がある。
張りがあって音域も広いけれど、やりきれなくてせつない、ブルーグレイの声。
<冷たいような甘いような、けだるいような、なまぬくいような歌>と書いた向田さんが、レコードに針を落としている姿を想像して、心が少しきゅっとなる。
「眠る盃」では、<ベロフの弾くドビュッシーのエスタンプ「版画」も悪くないかも知れませんね。>と続けていて、こちらもとてもそそられるのだけれど。